陽謀日記

陽謀を明かします

「冷戦後、提案された世界の一極化は、権力の一極集中だ。特にアメリカは経済、政治、文化、教育の政策を他国に強要している」~ハライター原の名作紹介「オリバー・ストーン オン プーチン」前半

欧米首脳を前に世界権力の一極集中を警告するプーチンロシア大統領(2007年2月10日、ミュンヘン安全保障会議で)

原題「ザ・プーチンインタビューズ」、邦題「オリバー・ストーン オン プーチン」というドキュメンタリー番組がアマゾンプライムビデオで放送されていましたので一気見しました。これをハライター原の名作紹介とさせていただきます。

 

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2015年7月から2017年2月にかけて、JFKプラトーン、スノーデンなど社会派作品で著名な映画監督のオリバー・ストーンプーチンロシア大統領に密着。大統領執務室で、公邸で、大統領専用機内で、還暦で始めたアイスホッケーの会場で、嘉納治五郎像のある柔道場で、プーチン自身が運転する車の中で、歯に衣着せぬ直球質問を投げかけ、プーチン大統領は機密こそ話さなくても十分あけすけに答えているように思えました。

そして、とても本音インタビューとして成立しないでしょうから、歴代アメリカ大統領では決して受けられなかったインタビューだろうとも思いました。

中身の濃い話が1話1時間、4話でまとめられました。西側の報道、日本のマスコミ報道では、決して見られない資料映像、決して得られない情報が豊富です。また、移民政策、LGBT政策に傾倒する日本でこそ、耳を傾けるべきプーチンの家族観や国家観があるように思いました。

 

全話通じてですが、プーチンアメリカを一貫してパートナーと呼んでいます。自制がきいている印象を強く持ちました。

さて、冒頭は両親について、不良少年が柔道を通じて更生したことや学歴、KGBにいた職歴について、ソ連崩壊後、エリツインに抜擢されます。

ソ連崩壊の不幸を、こう言います。「2500万のロシア人が突然異国民になった」。エリツイン時代民営化を進め、国有財産を手にした大富豪が誕生する一方一般の国民は貧しいままです。後を継いだプーチンはまずこの新興富豪オリガルヒを正そうとします。プーチンは「不正不公平を変えたかった。国の財産を二束三文で売られないようにしたかった。民営化を止めるのが目的ではない。秩序ある公正なやり方で進める。オリガルヒには財産権を保護すると言った。不当でも法律は法律だ。しかし、法律はより公正になると言った。大多数は従った」と言います。

貧しかったロシアの経済立て直しをする中で、旧ソ連圏の借金も返したと言います。ウクライナの債務160億ドルもIMFに返済した、と。こうした両国の関係性はまったく伝えられていない話です。

911同時テロの話題から、ソ連時代のアフガニスタン紛争で、アメリカの諜報機関ソ連の体制自体を打倒するためにテロ組織を利用し、ソ連崩壊後も変わっていないことを指摘するプーチンは、ブッシュジュニアにテロ支援の証拠(諜報員の実名)を渡したこと、ブッシュが「精査する」といった後、CIAからプーチンに届いた手紙には「反体制派との関係を維持する権利があり、今後も継続する」と書いていたことを明かし、反体制派にはテロ組織も含まれているのは明白と言います。

西側の報道では伝えられない資料映像がありました。馬渕睦夫ウクライナ大使が言っていた映像だと思います。

2007年2月10日ミュンヘン安全保障会議でのプーチン演説のワンシーンです。ロシアメディアの映像です。

「冷戦後、提案された世界の一極化を起きなかった。そもそも世界の一極化とは? どれほど脚色してもこの言葉が意味することは一つ。権力の一極集中だ。権力や意思決定の一極集中である。唯一の支配者を持つ世界、損害を被るのは支配下の人々だけではない。支配者自身も内側からむしばまれる。特にアメリカはあらゆる意味で国境を侵している。その証拠に経済政治文化教育の政策を他国に強要している」

会場は各国首脳で満席です。前ドイツの女性首相メルケルも険しい顔で聞いている姿がアップで映っています。アメリカも険しい顔から破顔して苦笑をもらすジョン・マケイン上院議員の姿が。

大国の大統領が公の場で世界統一政府の動きを指摘したら、陰謀論であろうとなかろうと大騒ぎになっていい話です。しかし西側メディアは黙殺しました。

 

<ロシアもNATOに入ることを検討している>

これもはじめて知った裏話です。

プーチンクリントンとのモスクワでの会談でこう提案したそうです。「ロシアのNATO加盟も検討課題だ」と。クリントン大統領は賛成したが、代表団はピリピリしていた。と。

オリバー・ストーン「加盟申請は?」

プーチン「なぜピリピリしていたか説明しよう。ロシアが加盟すれば投票権を得る。我々を操作できなくなる。アメリカは検討さえしないだろう」

 

続いて第2話です。

オリバー・ストーンが質問します。

「2007年ミュンヘン会議で対米関係の新たな見解を語った。2002~2003年に何があった? 2004年のウクライナオレンジ革命をどう思ったか?」

親欧米派のユシチェンコ氏VS親ロシア派ヤヌコビッチ首相

プーチン「ヤヌコビッチが選挙に勝ったが、暴動が起きた。アメリカが扇動したことで大規模デモになった。ウクライナ憲法に反し、3度目の選挙が行われた。これ自体クーデターとみなされる」。

プーチン「親欧米派のユシチェンコティモシェンコが権力を握った。あのような政権交代は歓迎できない。だが、ロシアは新政権と協力関係を維持した。だが政策は国民に不評だった。だからヤヌコビッチが次の大統領選に勝った。この地のアメリカの外交政策はロシアとウクライナの関係改善を阻止することだ」

 

NATO拡大の波はふたつあったとプーチンは言います。

「2001年10月(息子)ブッシュ大統領プーチンと冷戦終結の再確認をすると演説。その後、アメリカが一方的にABM(弾道弾迎撃ミサイル制限)条約を脱退した。イランが新たな脅威だと言って。しかし、イランは軍事用核開発を断念した。それなのにABM開発計画は進行中で、一部ヨーロッパで配備予定。誰に対して? ロシアも対応せざるを得ない」

また、2008年(息子)ブッシュは旧ソ連ジョージア政府による南オセチア攻撃を支持。

「我々が驚いたのは、ブッシュ大統領ジョージアの大統領を支持しただけでなく、ロシアが侵略者であるという図式を描こうとしたことだ」とプーチン

オリバー・ストーン「ブッシュ、オバマとも良好だったはずでは?」

プーチンアメリカがコーカサス地方でテロ組織を支援したことが両国関係に水を差した」

スノーデンがロシアに亡命した経緯を運転しながら語るプーチンオリバー・ストーンが「昔はロシアからアメリカへ亡命、今はアメリカからロシアへ亡命?」と聞くと、「何の不思議もない」と返す。

「どんなに悪者扱いされてもロシアは民主国家、主権国家だ。それはリスクを伴うが大きな強みでもある。本当に主権を行使できる国家は数えるほどしかない」

「それ以外は同盟国の義務を負わされているんだ。そういう国は自分の意思で自らの主権を縛っている」

本当に主権を行使できない国・日本には耳の痛い話です。

 

以上、1話から2話までの抜粋で、「オリバー・ストーン オン プーチン」の前半をお送りしました。