陽謀日記

陽謀を明かします

ファンド連合が支配するアメリカ経済~ハライター原の名著紹介「米国会社四季報」

米国会社四季報2020年春夏号(東洋経済新報社

軍需会社を調べるのも興味深い米国会社四季報

米国会社四季報。アメコミヒーローの本の表紙にようです。米国株への投資目的以外で買う人はいないかもしれません。私は、いわゆる国際金融資本の富の源泉が「ファンド」という形を取り始めたことを確認するために買いました。まあ物好きかもしれませんが、お付き合いください。

時価総額という基準で、アメリカを代表する大企業の上位株主の名前と持株の割合を紹介しましょう。GAFA(ガ―ファ)-グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルは、株式時価総額上位の常連です。イーロン・マスクマーク・ザッカーバーグといった創業者が株式の最大保有者であっても、3つ4つのファンド連合がそれを上回るのはテスラもフェイスブック(現メタ)もそうです。

兵庫チャンネル

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アップル バンガード(非上場)7.5% ブラックロック(上場)6.3% バークシャ・ハサウェイ(上場ウォーレンバフェット筆頭)5.7% ステート・ストリート(上場)4.1% …Tロウ・プライス1.1% ※2ファンドで13.9%

マイクロソフト バンガード8.2% ブラックロック6.7% キャピタル・リサーチ4.9% ステート・ストリート4.1% ※2ファンドで14.9%

アマゾン ジェフ・べゾス11.1% バンガード6.4% ブラックロック5.3% ステート・ストリート3.3% フィディリティ3% ※上位2ファンド計11.7%で創業者べゾスを上回り、上位3ファンドで15%弱。

▽アルファベット(グーグル) バンガード6.6% ブラックロック5.7% Bryn,Sergey5.5% ステート・ストリート3.3%

セルゲイ・ミハイロヴィッチ・ブリンは、グーグルの共同創業者

3ファンドで15%超え

 

運用資産残高ではブラックロックがバンガードより上だが、ほとんどの大企業の株主順位では、バンガードの方が上。そのブラックロックを支配するメロン財閥系のPNCファイナンシャル・サービシズを支配するのはキャピタル・リサーチ。キャピタル・リサーチはロサンゼルスで設立された株式非公開企業。行きつくのは「非公開」「非上場」です。

 

キャピタル・リサーチがブラックロックを支配 ファンドがファンドの株を持ち合う

PNCファイナンシャル・サービシズ・グループの筆頭株主はキャピタル・リサーチ8.1%

ブラックロック筆頭株主はPNCファイナンシャル・サービシズ・グループ22.3%

※PNCファイナンシャル・サービシズ・グループはメロン財閥

ステート・ストリートは筆頭株主ブラックロック8%

Tロウ・プライス・グループの筆頭株主はバンガード8.7%

バークシャー・ハサウェイは、ウォーレン・バフェット15.9% バンガード5.9%

銀行はバンガード筆頭株主が多い。

バンガードはウィキペディアによると、2020年1月31日時点の運用総資産額は7.1兆米ドル(約765兆円)。

日本でもおなじみのセゾン投信資料ではバンガードの2016年9月の運用資産総額は約384兆円、4年弱で倍増していることがわかる。

ブラックロックに次ぐ、世界2位の投資信託および上場投資信託ETF)の提供者である。(中略)バンガードは上場企業ではなく第三者株主が存在しないため、ファンドの保有者がバンガードのファンドであり、バンガードのファンドに投資をする投資家がバンガードの保有者になる仕組みで経営されている。ファンドの利益は、バンガードのファンドに投資をする投資家に還元されることになる。

ブラックロックウィキペディアによると、アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市に本社を置く、世界最大の資産運用会社。2021年末における同社の運用資産残高は10兆ドルと日本のGDPの2倍に相当する。ファンドを通じて主要な上場企業の大株主となっており、S&P500種株価指数を構成する企業の80%以上において、持ち株比率の上位3位までに入っている。

 

2大ファンドで15%弱

「15%」の意味は、ツイッターVSイーロン・マスクツイッターの買収対策でクローズアップされた「ポイズンピル」という買収防衛策制度にヒントがあります。承認を得ない15%以上の株式取得を認めない条項です。つまり15%は会社を支配するに十分な株式数ということです。2ファンドで15%弱だが、ファンド同士は仲がいい。意味はわかりますね。

 

ギリアド・サイエンシズという会社をご存じでしょうか。つい最近の名著紹介で近藤誠、中村仁一両氏の対談本を紹介し、近藤先生が「タミフルの7割が日本に流れていた」と書いていると紹介しました。その抗インフルエンザ薬タミフルの特許を持つのがギ社です。コロナ治療薬では「レムデシビル」で有名です。

 

上位株主構成はキャピタル・リサーチ9.4% ブラックロック8.4% バンガード8.2%などとなっています。

 

CNNのかつての報道を紹介しましょう。

CNN

 <鳥インフルエンザ大流行の予測は世界の人々をパニックに陥れているが、ギリアド・サイエンシズ社の株を所有するラムズフェルド国防長官やその他政界関係者にとっては朗報だ。

 カリフォルニア州に本拠を構えるバイオテック企業ギリアド社は、インフルエンザ治療薬として現在世界中から注目されている『タミフル』の特許を所有している。

 1997年からブッシュ政権入閣までの2001年の間、ラムズフェルド国防長官はギリアド社の会長を務めており、現在でも同社の株を保有しているが、その評価額は500万ドルから2,500万ドルの間であることが、ラムズフェルド氏自身による連邦資産公開申告書で明らかになった。(中略)少なくとも100万ドル以上資産を増やしたことになる。>

ドナルド・ラムズフェルド911時の国防長官。昨年6月88歳で死亡。(ブログ主注釈)

 <スイスの医薬品大手ロシェ社が製造販売しているタミフル(ギリアド社は販売額の10%のロイヤリティーを受け取っている)で利益を得た政界有力者はラムズフェルドだけではない。

 ジョージ・シュルツ国務長官はギリアド社役員として、2005年度に入ってから同社の株700万ドル分を売却している。>

最高支配機関「五人会議」の新旧メンバーが明かされている

ジョージ・シュルツは昨年2021年2月100歳で死亡。ニクソンレーガン政権で政府の要職を占めました。世界最大級の建設会社で非上場のベクテル社の社長を務めました。ユースタス・マリンズの「知られざる世界権力の仕組み」の中で、「世界権力の頂点に立つ最高支配機関『五人会議』の4人のうちのひとり」と名指しされた人物です。(ブログ主注釈)

 <(中略)「政界とこれほど繋がりの深いバイオ企業は他に類を見ない」サンフランシスコのシンク・イクイティ・パートナーズ社アナリストのアンドリュー・マクドナルド氏は評している。

 さらに重要なことは、合衆国政府が世界最大のタミフル購入者であるという事実だ。今年7月には、米国防総省兵士への配給用に、5,800万ドル分のタミフルを注文しており、議会も数十億ドル分の購入を検討中である。2005年度におけるロシェ社のタミフル売り上げ予測額はおよそ10億ドルで、前年度は2億5,800万ドルであった。>

以下略

 

ファンドの前は、ペーパーカンパニーが主要企業の大半の株式を支配していると、イギリスのメディアが報じたことがあります。その名は「シード&カンパニー」です。

デイリースター 2019年11月16日記事

「ニューヨークにある小さな金融機関は、1ダースのディレクターおよび半ダースだけの従業員を持っているけれども、財産約34兆ドルを保持している」

 

アメリカを所有していると言ってもいいペーパーカンパニーです。日本の主要各紙の過去記事を調べましたが、この会社は日経に小さな記事が1回載っただけでした。1987年日経「マネー全科」というコーナーで同社を紹介しました。

「株券などの保管振替機関DTCの名義代理人。DTCの預託証券はすべてシード名義で登録するため、この名前は多くの会社の筆頭株主として登場します」と。

 

リーマンショック時代のFRB議長のベン・バーナンキ回顧録「危機と決断」の中で「FRBがルールをじかに適用できるのは、(中略)銀行の持ち株会社約5000社だけ(その多くが傘下の関連会社をひとつにまとめるだけに設立されたペーパーカンパニー)だった」と述べています。

 

米国株式、米国経済、世界の大半を支配するのは、ペーパーカンパニーからファンド連合に変わりました。「キャピタル」(資本)や「バンガード」(前衛)、シード&カンパニー(種と会社)など、ある意味個性のない、無力そうな、漠然とした、社名では業種がわからないような名前の会社名が特徴です。「東インド会社」に通ずるものを感じます。

 

今後富の源泉はどのような形に変わるにしても、ますますその実態が見えにくいものとなるでしょう。

真の個人の所有者、あるいは真の権力者がますます表に出にくいものになるでしょう。「陰謀論」で思考停止していては太刀打ちできません。

国守衆兵庫チャンネル - YouTube

見えにくくても絶対的支配者がいます。アメリカにしろ属国の日本にしろそこの株主市場で勝てる者は絶対的支配者のみです。岸田政権が庶民のタンス預金をこのような魑魅魍魎、猛獣の棲む株式市場に引きずり込もうとしていますが、「資産倍増」など夢のまた夢でしかないことは言うまでもありません。