陽謀日記

陽謀を明かします

「グリーンスパンはグローバル勢力に低金利を強要された?」

「グローバル勢力の圧力で金利を上げられなかった」と語っている


アメリカの連邦準備制度理事会FRB)で1987年から2006年まで議長を務めたアラン・グリーンスパン氏は歴代議長の中でもとりわけ有名です。

 

「毀誉褒貶」と言いますが、一時はアメリカ史上最長の景気拡大に貢献した「マエストロ」と誉(褒=ほ)められ、一時は任期後のリーマンショックの犯人捜しに際して「低金利を維持した信用拡大によって住宅バブルのタネを蒔き、世界金融危機を招いた」と毀(そ)しられ貶(けな)されました。

 

ずっと探していたグリーンスパン氏の1967年のエッセイの内容は、金融政策のトップとして、リスクの高い金融派生商品を推奨するような金融緩和を積極的に進めてきた人物とはとても思えません。

いや、むしろそのような奔放な信用拡大を唾棄している人物と言ってもよく、金本位制を断固支持しているのです。

もちろん議長就任よりずっと以前のエッセイですが、FRBは1913年すでに設立されていました。辛うじて金本位制(ブレトンウッズ会議以降は金為替本位制)も維持されていました。この時期に金本位制を支持していた人が、金融自由化が加速する時期に債務拡大支持者へ転向するとは、信じがたいのです。これほど劇的な宗旨替えは驚くべきことです。

たとえは、小さすぎるかもしれませんが、保守派を名乗った稲田朋美氏が共産運動のひとつ、多数派差別運動であるLGBT(特に性自認擁護)に邁進しているようなものです。

 

グリーンスパン氏が指摘したのは、国家間の金利差を使えば、低金利国から高金利国に預金が流入することです。預金を追いかけてゴールドも流入します。「イージーマネー」の国では銀行準備金の不足を引き起こします。富が移転されるわけです。その例として、1927年の英米を挙げています。少し長いですが、我慢してお読みください。アメリカが金とドルの交換を停止する1971年より前のエッセイであるにもかかわらず、絶望的な筆致と言っていいでしょう。

 

第一次世界大戦後のことです。

「1927年に米国でのビジネスが緩やかな縮小を経験したとき、FRBは、銀行準備金不足の可能性を未然に防ぐことを期待して、より多くの紙幣準備金を作成した。しかし、悲惨なことに、FRBが、市場の力が指示したときに金利の上昇を許可することを拒否したため、金を失っていた英国を支援しようとした(政治的に受け入れられないものだった)。(中略)英国の金の流出を食い止めることに成功したが、その過程で世界の経済をほぼ破壊した。FRBが経済に送り込んだ過剰な信用は、株式市場に波及し、幻想的な投機ブームを引き起こした。遅ればせながら、FRBが超過準備金を吸い上げようとし、ブームにブレーキをかけることに成功したが、手遅れだった。1929年までに、投機的な不均衡が圧倒的になり、その試みは急激な縮小を引き起こし、その結果、ビジネスの信頼を失った。その結果、アメリカ経済は崩壊した」

1929年はアメリカの株式市場は大暴落しました。これに続く大恐慌アメリカが第二次世界大戦に参戦する原因ともなります。

 

グリースパン氏は、金本位制に敵意を持って、信用拡大を強力に推進する人のことを、「国家統制主義者」と呼んで、厳しく批判しています。

国債を発行することにより、大規模な福祉支出を賄う福祉国家は、政府が社会の生産的なメンバーの富を没収して、さまざまな福祉計画を支援するためのメカニズムにすぎない」

金本位制がなければ、インフレによる没収から貯蓄を守る方法はない。価値の安全な保管場所はない。もしあれば、政府は、金の場合に行われたように、その保有を違法にしなければならないだろう。(中略)福祉国家の財政政策は、富の所有者が自分自身を守る方法がないことを求めている。これは、金に対する福祉国家統制主義者の暴言のみすぼらしい秘密だ。赤字支出は、単に富を没収するための計画だ」

インフレによる没収とは、インフレは不換紙幣の減価を意味し、購買力を奪われることを意味します。インフレを通じて、購買力が没収されることです。税金よりもたちが悪く、預金からも購買力を奪います。古い預金ほど多くを奪っていきます。

インフレによる購買力の没収は是非覚えていてください。金言です。

 

情報通の方は、「ゴールドはロスチャイルドが支配しているから、グリースパン氏は金本位制を支持しているのだろう」とおっしゃるかもしれません。私もそんな面はあるかなと思っていました。しかし、次の記事に接して考え方を改めました。

 

2009年、グリースパン氏へのロイターのインタビュー記事です。冒頭に記事の一部を画像で貼り付けています。

 

同年はすでに議長を退任し、後任の「ヘリコプターベン(ヘリコプターで紙幣をばら蒔くベンとの異名)」ことベン・バーナンキ議長が2008年のリーマンショックに対応しているころです。

そもそもリーマンショックを引き起こしたのは低所得層にも積極的に融資するサブプライムローンと言われますが、その住宅バブルのタネを蒔いたのは前任のグリースパン氏であるという批判を受けていました。

このインタビューでグリースパン氏は重要な発言をしています。

 

「米中央銀行による借入コスト引き上げの取り組みがグローバルフォーシィズ(ブログ主註:グローバル勢力)によって圧力をかけられた」

 

借入コスト引き上げとはまどろっこしいですが、金利を上げることです。つまり金融引き締めです。グリースパン氏は、リーマンショックにつながるサブプライムローン問題のタネを自らが蒔いたのではなく、グローバル勢力が圧力をかけてきたからだ、という重大な証言をしているのです。

しかし、ロイター記者の書きようは「やれやれ、正体不明の者に責任転嫁するのか?」といった風です。

「あなた金融政策の最高責任者でしょ。グローバル勢力とか陰謀論ですか?」と言外ににじませていると言えば言いすぎでしょうか。

 

情報通の方ならば、<forces>という複数形に妙なリアリティーを感じ取られることでしょう。元来、金本位制を支持していたグリースパン氏の発言の真意は、「金利を上げて信用拡大を止めたかったのに、グローバル勢力の圧力でそうさせてもらえなかった」としか読めません。グローバル勢力の手先とも言える地位にはいましたが、19年間金融の最高権力者に君臨しても、思うような政策を取れないことに同情する面もあります。

 

陰謀論ガ―論者は、「闇の政府などどこにあるのだ」など極端なことを言いますが、わざわざ看板を掲げていては「闇」の意味がありません。最近も、FOXキャスターのタッカー・カールソン氏は「パーマネント・ワシントン」とグローバル勢力を表現しました。グローバル勢力はわざわざ名乗りこそしませんが、陰謀論ガ―論者に助けられ、堂々と表に出てきているのです。

 

グリーンスパン後、世界中でさらに加速してきた金融自由化(日本も先頭を走ってきました)と、国家が把握しきれない暴走マネーの存在は、戦争⇒恐慌⇒戦争あるいは、信用拡大⇒信用縮小⇒信用拡大という歴史を想起させずにはおれません。