「脱炭素の世界マスタープランは2007年米ヒューレット財団レポート」~ハライター原の名著紹介「SDGsの不都合な真実」前編
<SDGsの不都合な真実 「脱炭素」が世界を救うの大嘘>
編著=杉山大志 著=川口マーン恵美+掛谷英紀+有馬純ほか 宝島社、2021年第1刷発行
ハライター原の名著紹介です。今回は「SDGsの不都合な真実」を前後編で紹介します。まずは前編です。
国守衆兵庫チャンネルで動画を更新しました。ぜひご覧ください。
温暖化防止から気候変動防止へとお家芸のゴールポスト変更をしつつ、このまま化石燃料を使って二酸化炭素を排出し続ければ、地球の環境は後戻りできない危機に陥るというのは大ウソです。大ウソで産業を止めて先進国の富を奪うだけで、後進国に分配するのではなく、新たな金儲けの仕組みをつくろうというのが世界的左翼運動・脱炭素政策の本質です。
二酸化炭素の排出を2030年までに半分に、2050年にはゼロにという先進国の共通目標は狂気の沙汰です。
なにしろ、世界一、二酸化炭素を排出する中国が脱炭素に非協力的ですから、こんな目標は達成されるわけなどありません。結局中国が一人勝ちし、世界一厳しい削減目標をきまじめに守る日本が一人負けする未来しかないことを、読者は気づくでしょう。
筆者別に印象的な記述を紹介していきます。
編著で筆者を代表して序文も書いている杉山大志キャノングローバル戦略研究所研究主幹
CNNディレクターが気候変動を煽ることで儲かるフィアーセルズ(※恐怖は売りになるというマーケティング戦術、私たちは恐ろしい噂を広めるのが大好き)と漏らすところを米調査報道NPOプロジェクト・ベリタスが暴露した。
※「太陽光発電は”屋根の上のジェノサイド”」という小見出しが都知事のパロディ絵のキャプションにもつながっています。
太陽光発電用の結晶シリコンの80%は中国製であるという。そのうちの半分以上が新疆ウイグル自治区における生産であり、世界に占める新疆ウイグル自治区の生産量のシェアは実に48%に達すると推計されている。
国際再生可能エネルギー機関によると、太陽光発電能力は、2020年日本は世界3位、すでに平地面積1平方メートル当たりの発電量では主要国のなかで最大。
菅直人首相の2011年の説明では「ひと月にコーヒー一杯程度の負担で再生エネ導入が進む」とされていた。
2012年の標準家庭での月当たりの負担額は、コーヒー一杯より安い57円で始まったが、2021年度の負担額は月額870円、年額1万円を超えた。
2020年12月政府の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の経済効果は2030年に90兆円、2050年190兆円。
2010年民主党政権グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略は2020年に50兆円の経済効果、140万人の環境分野の新規雇用創出を謳ったが、何も実現しなかった。賦課金負担による経済へマイナスの影響だけ。
製造が簡単なEVが主流になれば、内燃機関を得意とする日独の優位性が失われ、中国製自動車が世界市場に進出するきっかけにもなるのだ。
モータージャーナリストの岡崎五朗氏
フォルクスワーゲンは不正をやらかし、それを挽回するためにエンジン車やハイブリッドを悪者に仕立て上げ、その一方でいまだエンジン車を涼しい顔で売っている。これはどう考えても正義ではない。
面積当たり太陽光発電容量がダントツ世界一の日本には、太陽光パネルの設置場所がほとんど残されていない。だから森林を伐採してまでメガソーラーを建設している。
作家の川口マーン恵美氏
ドイツでインフレ率が上がっている一番の原因は炭素税だと考えるのが当然かと思うが、どのメディアもそれに言及するのを避けている。
ディ・ヴェルト紙の論考―(再生可能エネルギーへの)壮大なエネルギー転換が(ドイツで)始まった発端は米国。(略)2007年ヒューレット財団(ヒューレットパッカード社の創立者が作った慈善団体)。年間6億ドル投資すれば全世界で110億トンのCO2を削減でき、地球の温度の上昇を2度以下に抑えられると明記。国民に社会問題として定着させることができるか提示され、遠大な脱炭素計画にスイッチが入り、このレポートが世界のマスタープランとなった。
2008年プランを実行に移すために、オランダのデン・ハーグに欧州気候基金が設立。出資者はヒューレット、パッカード両財団、ブルームバーグ、ロックフェラー、イケア財団、ドイツのメルカルト財団など。
(略)ヨーロッパでの気候政策に本当の弾みがついたのは、福島第一原発事故の後だという。
素材メーカー環境・CSR担当の藤枝一也氏
2021年アゴラ言論プラットフォームで杉山大志氏の記事が衝撃的。「ESG投資の旗振り役である欧米金融機関が人権抑圧を無視して事業を進めている」
(略)これらの金融機関と関係を持つことは、間接的に人権抑圧を容認することにつながる。ここに挙がっている金融機関とは、ゴールドマンサックス、ブラックストーン、シティグループ、UBS、JPモルガン
SDGsの前身、2000年国連ミレニアムサミットで採択されたMDGs(ミレニアム・ディベロップメント・ゴールズ)。2015年を最終年とし貧困撲滅など8分類21項目を掲げた世界目標。このMDGsが未達に終わり、17分類169項目のSDGsが誕生。(略)
SDGsの目標達成年とされる2030年の未来を想像すると、SDGsは必ず未達に終わる。断言する。すると2031年以降にポストSDGsが生まれるはずだ。(略)分量が多いほど、内容が難解なほど、クライアントに成果や付加価値が現れないほど、ポストSDGsコンサルタントは儲かり、サステイナブルなビジネスになるのだ。(略)
ほかにも未達から新目標への具体例は、
「京都議定書(未達)→パリ協定」
「生物多様性2010年目標(未達)→愛知目標(未達)→ポスト愛知目標」
事程左様にCSR(コーポレート・ソーシャル・レスポンスビリティ=企業の社会的責任)分野の活動は手を変え品を変え目先を変えることが繰り返されてきた。
※脱炭素計画はできもしない目標を掲げては、やはりできない、しかしもっと難しい新目標を掲げて、またできないの繰り返し。世界的財団、国際金融資本などによる持続可能なビジネスであることがおわかりいただけると思います。
そして、例えば、アメリカは民主党が進めても共和党が押し戻すので、目標達成などできませんが、日本は民主も自公も唯々諾々と難しい削減目標を国際公約しては、国際的優位性の高い内燃機関を持つ国内の自動車産業を潰す<日本のひとり負け>を買って出ているのです。マスコミも含めて愚の骨頂です。
次回は同書の後編をお送りします。