陽謀日記

陽謀を明かします

「日本はファイブ・アイズの下のB層。監視もされる限定協力国」~ハライター原の名著紹介・スノーデン関連2作品「独白」と「暴露」後半  

「スノーデン独白 消せない記録」(エドワード・スノーデン著 2019年 河出書房新社

「暴露 スノーデンが私に託したファイル」(グレン・グリーンウオルド著 2014年 新潮社)

 

左が「告白」右が「暴露」、核の傘などないに等しいと知る

を紹介しています。今回はその後半です。

 

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人権派弁護士で英ガーディアン紙のコラムニスト、グレン・グリーンウォルド記者の「暴露 スノーデンが私に託したファイル」(2014年、新潮社)を見ていきます。

ここにも日本へのインフラ攻撃の話は出てきませんが、日米同盟への信頼感を大いに覆すものがありました。アメリカが信頼する国は、NATOでも日米同盟の日本でもないのです。

スノーデンが持ち出しグレン・グリーンウォルド記者に渡した機密データから、アメリカの大量監視はファイブ・アイズ(アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)では共同作戦で、イスラエルとは情報共有関係にありますが、日本はまったくの蚊帳の外とわかります。協力関係も一部ではしていますが、ほとんどは監視対象です。

<「日米関係」とは何だったのか>でも紹介しましたが、「いつでも裏切れる」同盟関係という考えを改めて強くしました。

 

衛星通信傍受の計画について2010年GCHQ(英国の諜報機関)がファイブ・アイズの年次総会で使った極秘資料。米英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのほかは蚊帳の外を意味します。ただし、ファイブ・アイズのほかで特異な地位を占めるのがイスラエルです。

ファイブ・アイズの同盟各国は、ほとんどの監視活動を共同でおこない、さらに一年に一度開かれる信号開発会議で一堂に会し、諜報技術開発の進捗と前年の成功を自慢し合う。

NSAとして異例、アメリカ国民の通信記録を含む生の情報を日常的にイスラエル側に提供している。

イスラエル通信情報国民部隊(ISNU)

三沢基地

2009年NSAミッション運用技術責任者が書いたメモでは三沢にある諜報施設における運用能力の高さを褒め称えています。MSOC(三沢安全保障作戦センター)です。もちろん日本であって日本ではありません。

NSA自身のファイル2010年のリストによれば、相手国の通信データを得たアメリカの通信会社がNSAのデータベースに転送するプログラムの標的に日本がなったこともある。

ファイブ・アイズ各国(包括的協力国)に次いでNSAと協力関係にあるB層(限定的協力国)。特定の活動に協力する国であると同時に、求めてもいない監視をされている国でもある。B層は日本。

2012年度「海外協力国総括」ではNSAから資金援助を受けた国のひとつ、日本。

国際安全保障問題ISIを担当するNSAのグローバル・ケイパビリティ・マネジャーが2006年に作成した連絡票に、日本への経済および貿易スパイ活動をしていることが明確に記されています。

イラン核開発について制裁の賛成反対どちらに投票するか信号諜報の対象国のひとつが日本でもありました。票読みをスパイしていたわけです。

外交的スパイ活動のために近しい同盟国の多くの大使館や領事館にもアクセス。文書55には日本でも4か所のアクセスポイントが(具体的には、LAN埋め込み装置から、埋め込み装置から、磁気放射センターから、コンピューター画面から)あった。

日本が使わせてもらっているのが、Eメール、閲覧履歴、検索履歴、チャットを収集、管理、検索するための要となるプログラムでリアルタイム監視すら可能だそうです。

 

スノーデン自伝でもグレン・グリーンウォルド著作でも共通していたのが、監視の概念の核心として、「人々の幸福の合計が最大になるように努力する」功利主義を体系化したジェレミーベンサムが生み出した”一望監視装置パノプティコンを指摘していたことが印象的です。一望監視装置とは、監視システムが効果的に人を統制できるのは自分の言動が監視されているかもしれないという認識を人々に植え付けるからということです。

功利主義をもう少し説明すると、「一部の人の快楽を削ることによって他の多くの人の快楽を増加させられるならば、コミュニティ全体の効用を増大させることになり、それは正義である」ですが、人間の尊厳、個人の自由が無視されているとの批判が多いです。

以前、名著紹介「子宮頸がんワクチン事件」で、命のコストパフォーマンス(※極めて唯物論的なことばです)という予防接種の根底思想として著者が指摘していた人物です。

両著を読んで率直な感想は、大半が監視されている意識が乏しい中での全望監視が実現しているとしか思えません。

両著の警告を真摯に受け止めなければ、

ビッグブラザーがいつどこでもあなたを見ている」という

民主主義とは程遠い全体主義専制主義しか我々の未来にはありません。

 

「911後秘密の諜報機関の扉が技術おたくに大きく開かれた」~ハライター原の名著紹介・スノーデン関連2作品「独白」と「暴露」前半

「スノーデン独白 消せない記録」(エドワード・スノーデン著 2019年 河出書房新社

「暴露 スノーデンが私に託したファイル」(グレン・グリーンウォルド著 2014年 新潮社)

 

独白と暴露

を紹介する前半です。

 

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このスノーデン自伝にはオリバー・ストーンの映画「スノーデン」やドキュメンタリー「オリバー・ストーン オン プーチン」で取り上げられた<日本のインフラ破壊ウイルスの話>はまったく出てきませんでした。 信頼できる記者には資料提供しましたが、本人自身がひとつひとつの証拠を情報開示することはなかったからかもしれません。香港を立つときに今後一切証拠にアクセスできないようにしています。 一方、記者の本では多数の証拠とともに具体的な告発があります。 探し物はありませんでしたが、十分すぎるほど衝撃的な内容です。世界や日本がどこに向かっているかがはっきりしました。 前半は諜報活動の民営化、後半は日本がファイブ・アイズ各国より明らかに格下の「同盟国」であることを紹介していきます。

自伝本の帯に「スノーデンがやったことは、NSAによって、電話やネット上のほとんどあらゆる活動を完全に記録・保存できる<大量監視システム>が開発配備されているという暴露」とありますが、あまりに大きな悪巧み過ぎてふつうの人にはピンとこないかもしれません。実はわたしも映画「スノーデン」は以前ビデオで見たのにほぼ何の引っ掛かりもなかったのです。目覚めてなかったですが。

スノーデンは愛国心の発露として諜報活動に携わった自分史の中で、それこそ現職大統領の私生活を丸裸にできるほどの誰でもいつでもどこでも監視できる恐さを世界市民にも噛み砕いて説明しようとしたのでしょう。「削除は奥深くに移しただけで一瞬に削除などできません。コピーに時間がかかることを見ればわかります」といった噛み砕きです。収集されたのはコンテンツとメタデータ。コンテンツと言っても取るに足らない会話の中身を収集してどうするの?という人もいるでしょう。より問題なのはメタデータです。昨晩どこで寝たか、今朝何時に起きたか、日中に訪れた場所、誰と接触し、誰に接触されたか、まさに日常の行動が丸裸にされます。しかもコンテンツと違い、自分でコントロールできません。すべてを読む必要のない仕分けをメタデータがしています。

また、これまで「対テロ戦争株式会社」などで紹介してきた通り、民営化の大波があらゆる国営を飲み込んでいることがわかります。それは紛れもない諜報活動の民営化です。

機密の暴露後、政府には、大した学歴もなく、職を転々とした信用できない人物として描かれたスノーデンですが、次のような説明がわかりやすいでしょう。

911後に望まれたの、はコンピューター技術を持つ人材だけだったと。

「二度と911のような不意を突かれないシステム構築に欠かせないのは技術。その結果、極度の秘密性につつまれた諜報機関の扉が技術おたくに大きく開かれた」 「各種諜報機関は、自分たちの内規をすべて無視して技術的な能力を持った人間をなんとか雇おうとした」 「アメリカの諜報活動は、公僕と同じくらい民間の従業員がやっている。契約業者を使えば、福利厚生や年金を払う義務は負わずにすむが、政府高官に本当の利点は、利益相反だ」

スノーデンは実際には民間業者の所属であっても、7年間で一貫してCIA、NSA内で働き、キャリアを積んでいます。デルやブーズ・アレン・ハミルトンは一種の派遣会社のように見えます。

CIA新本部ビルでの初日、みんなコンピューター屋、ほとんど全員が契約職員の緑色バッジという記述に凄まじい民営化ぶりがよくわかる。

そしていわゆる取るに足らない小物でない証拠は、アメリカ政府のまさに血眼の捜索がそれを物語っている。

香港でインタビューを受けたあと、国連やウィキリークスの助けを借りながらもアメリカの影響下を避けるルートをたどる途中、ジョン・ケリー国務長官がスノーデンのパスポートを無効にしました。ロシア・シェレメーチェボ空港ではロシア諜報機関から「情報提供を打診されるも拒否」して40日足止めをくい、その間にスノーデンは27か国に政治亡命を申請するもアメリカに逆らえる国はなく、結局8月1日ロシアが一時亡命を認めた。

スノーデンの諜報活動7年間で、「的を絞った個人の諜報から全国民の大量諜報への変化した」

仕事内容も諜報の流れを管理し接続する→永遠に保存する方法を考案→あらゆる場所からアクセス検索するに変化し、自ずとアクセス権限も上がり、最高機密に接するまでになる。最後の赴任先であるハワイ。「ハワイのパイナップル畑の地下奥深くで、ほとんど世界中あらゆる老若男女の通信に無限にアクセスできた。そうした人々の中にはアメリカ国民3・2億人もいて、アメリカの憲法だけでなくあらゆる自由な社会の基本的価値観を大幅に侵害する形で監視されている」と述べている。

<暴露した理由>

世界中の、先進的だと言われる政府がこのプライバシーを守るという約束を軽視しているのを目撃したので、ぼくは告発した。もうすでに6年になる。だが6年にわたり、こうした軽視は続く一方で、その間に民主主義国は専制主義的なポピュリズムへと退行した。この退行が最も露骨に出ているのは、政府とマスコミの関係だ。…何が本当かが、意図的にフェイクとごっちゃにされ、そこで使われている技術は、その混同を空前の世界的な混乱へとスケールアップできてしまう。…非現実の創造は、諜報業界の最も恐ろしい技術だからだ。ぼくのキャリア期間だけですら諜報を操作して戦争の口実をつくり出したその機関は――そして違法な政策と影の法廷により、誘拐を「超法規的移送」として、拷問を「拡張された尋問」として、大量監視を「バルク収集」として許容したその機関は――一瞬のためらいもなくぼくを中国の二重スパイ、ロシアの三重スパイ、いやもっとひどい「ミレニアル」呼ばわりさえしたのだった。

そして、これは次に紹介するグレン・グリーンウォルド記者の著作から詳細にわかるが、同盟国といえども諜報対象ということです。

スノーデンは、大使館は諜報のプラットフォームというほどです。

諜報の収集分析が、陽動情報やプロパガンダの生産にも使えてしまい、それがアメリカの敵と同じくらい同盟国に対しても――そしてときにはその市民について使われるのも知っている。

と述べています。

「1クリックで日本壊滅」疑惑は払しょくされたか~ハライター原のスノーデン関連名作映画紹介

映画「シチズンフォースノーデンの暴露」(ローラ・ポイトラス監督 2014年)と、

映画「スノーデン」(オリバー・ストーン監督 2017年)の2作品を紹介します。

次回以降は、日本の国会の反応や、スノーデン関連図書から日本関係分を抜粋してお送りする予定です。

 

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「同盟国でなくなった日には、彼ら(日本人)は終わり」

映画「スノーデン」でスノーデン役の俳優が2009年当時の回想とともに告白するシーンです。

核兵器は1クリックでは発射できない。サイバー攻撃の怖さがここにある

マウスクリック1回で、日本列島の灯は一斉に落ちます。アメリカの同盟国でなくなったら、インフラに感染させたマルウイルスが発症するサイバー攻撃諜報機関NSAがしたということです。このマルウイルスは駆除されたのでしょうか。そもそも陰謀論でしょうか。

映画「シチズンフォースノーデンの暴露」でも意思決定の最上流に誰がいるのか、監視リストに載る人は何人いるのか、驚くべき内部情報が示されます。これも陰謀論でしょうか。

日本は世界中で大騒ぎになった大量監視問題で取り残され、何周も遅れ訳も分からず最後尾を走っているように見えます。ほかの問題以上に。

 

両作は登場人物がほぼ同じです。本物が登場するか俳優が演じるかの違いですが、本質的には両作は実話に沿ったものだからです。突き合わせれば、この世界監視の実態がよりわかりやすくなります。ジョージ・オーウェルが1984年で描いた監視社会そのものです。

スノーデンは、911後、アメリカのNSA(国家情報局)が世界中のほとんどの通信やメールを大量に収集、監視していたという国家ぐるみの犯罪を暴露した人物です。その収集した情報の規模の大きさを示せば、1984を実感していただけると思います。コンピューターの天才スノーデンが、自ら開発段階で設計構築に関わった「ヒートマップ」というシステムが世界中からどれくらいの情報を収集しているか、赴任先のハワイオアフ島NSA工作センターで同僚に説明する場面が映画「スノーデン」に出てきます。

こう言います。「3月の世界中からデータ収集したメールやスカイプはフランス7000万件、ドイツ5億件、ブラジル20億件、アメリカは電話会社のデータ以外メールと通話31億件、ロシア15億件」

加えて、秘密裁判所の存在が恐怖そのものです。密かに令状が発行され、本人にも通知されずに拘束されるというもので、この令状のデータもスノーデンは持ち出しました。外国人なら令状すら不要です。

 

以上のような事の重大性をお話したうえで、前回の名作紹介「オリバー・ストーン オン プーチン」でもお話した、日本のインフラへのマルウイルス疑惑を深掘りします。

この件は「シチズンフォー」では扱われませんでしたが、「スノーデン」では扱われました。スノーデンの方がシチズンフォーより後の公開ですし、亡命したロシアでオリバー・ストーンが新たに聞き出せたことと想像できます。

もちろん、「オン プーチン」に出たのはスノーデンの映像の一部ですから、スノーデンの映像を詳しくたどります。

スノーデン役がポイトラス監督役に日本時代を話す場面です。

スノーデン「デルから日本に派遣されました。機密も見ました。高給だし日本で暮らしたかった(※押井守攻殻機動隊が好きだと恋人とメールでやり取りするシーンやCIAの面接で日本語も話せるというシーンが出てきます)。オバマ政権になって状況も良くなるかもと。でも違いました」

横田空軍基地2009年というシーンが挟まれ、基地内にNSA工作センターがあった(ある)ことを示唆します。

スノーデンは「最初の仕事はエピックシェルターの構築でした。NSAが日本人を感心させるために見せたのは日本国民の監視への協力依頼です。断られました。国民の監視は違法だとね。でも監視は実行した。日本の通信システムの次は物理的なインフラも乗っ取りに。ひそかにプログラムを送電網やダム、病院に。もし、日本が同盟国でなくなった日には彼らは終わり」

そして日本列島が一斉に停電するシーン。日米会談で協力を断った日本の制服組には高官と見られる人がふたりいました。

 

「オン プーチン」との違いは、「オン プーチン」は「同盟国でなくなったら(潜伏させたマルウイルスの起動で)日本は真っ暗に」と訳されましたが、「スノーデン」では「彼らは終わり」と訳されました。つまり一時的な全国的停電というレベルではなく、お先真っ暗の意味、壊滅しますよという意味合いです。

 

日本に関係する部分で言えば、スノーデンが暴露した米政府による国民大量監視の実態は事実であり、マスコミではドイツやブラジルなどでも大騒ぎになりました。その延長戦上に日本のインフラへのマルウイルス攻撃疑惑があり、その不安はまったく除去されないまま、ほとんどの国民が当時も今も無関心のままでいます。

 

シチズンフォー」からは最後の場面を取り上げます。聖ワシリイ大聖堂が窓越しに見えるモスクワのホテルで、亡命後のスノーデンとグレン・グリーンウオルド記者が筆談しています。香港の翌年、2014年のことでしょう。

グレン・グリーンウオルド記者が殴り書きする中から、

勇気ある告発者、新しい情報源と接触していて、次のような新情報がもたらされました。スノーデン自体が「信じられない」と漏らすように、日本を除く世界で大騒ぎになったのに、事態は悪化していることをうかがわせます。

・ドローン攻撃はすべてドイツの米軍基地からなされている

・意思決定の流れの最上位には米大統領がいる

・120万人が監視対象リストに載っている

国守衆兵庫チャンネル - YouTube

 

今回の名作紹介は以上です。

「インフラにプログラムを潜伏させた。日米同盟を解消したら日本は真っ暗に」~ハライター原の名作紹介「オリバー・ストーン オン プーチン」後半

後半の要点です。

ウクライナ紛争の発端は「ウクライナを通じて画策された関税障壁なきロシアの完全市場開放」

★「米国との同盟を解消したら日本に仕込んだマルウイルスが発電所や鉄道を破壊し機能停止できる。2007年から2008年に仕込んだ」(スノーデン)

 

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ハライター原の名作紹介として、「オリバー・ストーン オン プーチン」という全4話のインタビュー番組を取り上げています。今までいくつか紹介しましたアマゾンプライム作品の中でも必見です。今回はその紹介の後半です。

第3話 <ウクライナ問題の起点 市場開放を巡る争い>

ソ連崩壊後ウクライナが独立し、急激な民主化と国家資産の公然たる横領が横行し、国民の生活水準は低下します。ロシアとの間で関税障壁のない経済が一体化していたウクライナを通して、ロシアの市場完全開放を画策したアメリカを中心した西側諸国と、WTOと17年間かけて合意した貿易ルールを反故にされ防戦するロシアとの争いが浮き彫りになります。

ウクライナがいったん発表したEUとの連合協定調印を撤回したことが大転換点となります。2013年11月から4か月間もの暴動がウクライナで起きますが、この暴動を「非常に不可解」と言うオリバーストーンは、外国などで訓練を受けた狙撃部隊が警官と市民の双方を狙ったと指摘すると、プーチンも「あなたが言った通り」と応じます。

2014年2月21日ヨーロッパの外相3人同席の上でヤヌコビッチ大統領と反体制派が話し合い、大統領選前倒しに合意しましたが、西側報道では「ヤヌコビッチがキエフを放棄した」と伝えられ、ヤヌコビッチの公邸が占拠された。検事総長が銃撃され、ヤヌコビッチの車列も狙われました。ロシアの手引でヤヌコビッチはロシア併合前のクリミアに逃れ、1週間以上身を隠します。

一連の西側報道について、プーチン「なんでも曲解され歪められる。何百万人という視聴者を欺ける。メディアが独占状態にあればね。かたよりのない目で見ればクーデターは明らか」と言います。このクーデターを容認しなかったのが南東部のドンバス地方ですが、ロシア語の使用を制限する法律まで作られては親ロ派住民の激しい抵抗もやむなしと思えます。

<ここからいわゆる新保守主義ネオコンの実名と映像がばんばん出てきます>

国務次官補の欧州ユーラシア担当ビクトリア・ヌランド「積極的に政権交代を支持していた」とオリバー。ジョン・マケイン上院議員が訪れた集会にはネオナチ含む過激派指導者が参加していた」とオリバー。「全米民主主義基金NEDもウクライナで活動していて、カール・ガーシュマン会長はウクライナ独立を強く訴えた」とオリバー。「オープンソサイエティ財団創設者、ハンガリーの大富豪ジョージ・ソロスウクライナの組織の支援に深く関与している」とオリバー。すべてオリバーストーン発信です。

オリバーストーン「ウクライナの組織の支援に深く関与していますか?」という問いに、プーチンは「承知している」「あなたの言うとおり」と自制的です。

彼らの関与についてもプーチンは「言う通りだ」と応じ、「彼らの行動は時に理解できない。NATOを統制するために外敵を必要としているように見える」と婉曲的な物言いです。

第4話です。

オリバーストーン「民主党全国委員会へのサイバー攻撃はトランプを勝たせるためか?」と聞きます。

プーチンは答えます。「本当にくだらない言説だ。ロシアとの関係修復に取り組むことを公言していたからトランプ氏には好感は持っていた。すると各国のジャーナリストが突っ込んできた。私をはめるために。ハッカーが暴露した疑惑は事実だから全国委員会委員長は辞任した。これはアメリカの内政問題だ。

ロシアがハッキングしたというデマの目的は①大統領の正当性を失わせる②米ロ関係修復を難しくする③米ロ内で政治的争いの引き金を用意する

対して、ロシア大統領選への外国の関与はどうでしょうか?

オリバーストーン「2000年も2012年もロシア大統領選に米は介入したか?

プーチン特に2012年は強引だった。私はオバマ大統領とケリー国務長官に問題を伝えた。ロシア駐在の外交官があからさまに介入するとは信じがたい

ここで再び登場するのが外交官ヌランド氏です。「我々はロシア活動家と国内外において報道の自由を強化するプログラムを実施しています」との映像が流れます。この方はバイデン政権では国務省の№3になっています。

プーチンは続けて「彼らは反体制派を結集し、抗議集会に資金援助した。外交官の本来の任務は二国間の良好な関係を築くことだ」と言います。

ここで極めて日本にも重要な情報が提示されます。

オリバーストーンの映画「スノーデン」の一場面が挿入されます。

スノーデンが日本にいたときの話。NSA国家安全保障局)は自分たちの能力を日本人に示そうとした。国民の監視活動に協力すると言うと日本側は渋った。日本の法に反するからと。

※スノーデンが横目でオープンガラスの日米会議の様子を見ている場面が出てきます。アメリカ側はNSAの制服と思われます。議会証言の映像で見たNSAの制服とよく似ています。日本側も左肩に☆を載せた軍服を着た人が複数いました。オリバーストーンは細部にこだわる監督ですから、スノーデンの当時の赴任先横田基地内で「監視協力」の提案を受けたのでしょうか。

スノーデンのセリフに戻ります。

「だが僕らは実行した。通信システムにとどまらず物理的インフラにも手を出した。電力系統ダム病院にプログラムを潜伏させたから

アメリカと同盟を解消したら日本は真っ暗になる」

 

オリバーは「アメリカが日本にマルウエアを仕掛け発電所や鉄道を破壊し機能停止できるなら、ロシアも危険性を認識し対策を講じているはずだ。ロシアはアメリカの仮想敵だから」と振ると、

プーチンは「技術面の自立と安全の確保を検討しはじめたのはここ数年のことだ。今は十分に考え適切に対処している」

 

アメリカによるイラン核施設へのマルウエア攻撃疑惑を報じた60ミニッツの映像、大統領選後ロシア主要銀行六行で起きたサイバー攻撃を伝えるニュースと、バイデン副大統領とオバマ大統領が民主党へのサイバー攻撃をロシアの仕業と決めつけたうえで、報復をほのめかすインタビュー映像(バイデン2016年2月、オバマ2016年12月)が流れ、オリバーは「とんでもない発言だ。就任式の前に何かあったはずだ」と述べます。

 

オバマ大統領から勲章を授与され感極まるバイデン副大統領

最近のオバマ政権について、互いを表彰し合っていたソ連共産党政治局を思い出すという。バイデンとオバマが勲章を贈り合う様子を「特に滑稽だったね。この政権はもう重大な決定を下せない」と。

原爆投下について

「人類史に悲劇的な1ページが加わった。軍事専門家いわくあの時点で敗北が決まっていた日本に核兵器を使う意味はなかった

オリバーストーン「ケイマン諸島に隠し財産はあるか?」

「あればとっくに見つかっているよ。金持ちになったところで大きな幸せにつながるとは思わない」

長期政権と後継者について「後継者は必要だ。健全な選考プロセスが大切。この競争に参加できるのは国益を考える者に限るべきだ」

インタビューは、5、6年前のことですが、ウクライナ問題の根っこは何も変わっておらず、マスコミ報道では正しく伝えていないことが当時も今も存在するようです。

プーチンはおかしくなったのか? 

少なくとも、この当時は極めて冷静に状況を分析し、アメリカの内政にも外交にも通じています。

たったひとつ聞けなくて残念だったのが、第三次世界大戦の危機とも言われるシリア上空でのトルコ軍機によるロシア軍機撃墜事件です。NATO対ロシアを回避できた真相について知りたかったと思いました。

ただ、その一点を除けば、満足のいく作品でした。

全体主義のロシア報道より西側の報道の方が信頼できる」

そう言う日本の保守派を自認する方に、是非見てほしいビデオです。

「冷戦後、提案された世界の一極化は、権力の一極集中だ。特にアメリカは経済、政治、文化、教育の政策を他国に強要している」~ハライター原の名作紹介「オリバー・ストーン オン プーチン」前半

欧米首脳を前に世界権力の一極集中を警告するプーチンロシア大統領(2007年2月10日、ミュンヘン安全保障会議で)

原題「ザ・プーチンインタビューズ」、邦題「オリバー・ストーン オン プーチン」というドキュメンタリー番組がアマゾンプライムビデオで放送されていましたので一気見しました。これをハライター原の名作紹介とさせていただきます。

 

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2015年7月から2017年2月にかけて、JFKプラトーン、スノーデンなど社会派作品で著名な映画監督のオリバー・ストーンプーチンロシア大統領に密着。大統領執務室で、公邸で、大統領専用機内で、還暦で始めたアイスホッケーの会場で、嘉納治五郎像のある柔道場で、プーチン自身が運転する車の中で、歯に衣着せぬ直球質問を投げかけ、プーチン大統領は機密こそ話さなくても十分あけすけに答えているように思えました。

そして、とても本音インタビューとして成立しないでしょうから、歴代アメリカ大統領では決して受けられなかったインタビューだろうとも思いました。

中身の濃い話が1話1時間、4話でまとめられました。西側の報道、日本のマスコミ報道では、決して見られない資料映像、決して得られない情報が豊富です。また、移民政策、LGBT政策に傾倒する日本でこそ、耳を傾けるべきプーチンの家族観や国家観があるように思いました。

 

全話通じてですが、プーチンアメリカを一貫してパートナーと呼んでいます。自制がきいている印象を強く持ちました。

さて、冒頭は両親について、不良少年が柔道を通じて更生したことや学歴、KGBにいた職歴について、ソ連崩壊後、エリツインに抜擢されます。

ソ連崩壊の不幸を、こう言います。「2500万のロシア人が突然異国民になった」。エリツイン時代民営化を進め、国有財産を手にした大富豪が誕生する一方一般の国民は貧しいままです。後を継いだプーチンはまずこの新興富豪オリガルヒを正そうとします。プーチンは「不正不公平を変えたかった。国の財産を二束三文で売られないようにしたかった。民営化を止めるのが目的ではない。秩序ある公正なやり方で進める。オリガルヒには財産権を保護すると言った。不当でも法律は法律だ。しかし、法律はより公正になると言った。大多数は従った」と言います。

貧しかったロシアの経済立て直しをする中で、旧ソ連圏の借金も返したと言います。ウクライナの債務160億ドルもIMFに返済した、と。こうした両国の関係性はまったく伝えられていない話です。

911同時テロの話題から、ソ連時代のアフガニスタン紛争で、アメリカの諜報機関ソ連の体制自体を打倒するためにテロ組織を利用し、ソ連崩壊後も変わっていないことを指摘するプーチンは、ブッシュジュニアにテロ支援の証拠(諜報員の実名)を渡したこと、ブッシュが「精査する」といった後、CIAからプーチンに届いた手紙には「反体制派との関係を維持する権利があり、今後も継続する」と書いていたことを明かし、反体制派にはテロ組織も含まれているのは明白と言います。

西側の報道では伝えられない資料映像がありました。馬渕睦夫ウクライナ大使が言っていた映像だと思います。

2007年2月10日ミュンヘン安全保障会議でのプーチン演説のワンシーンです。ロシアメディアの映像です。

「冷戦後、提案された世界の一極化を起きなかった。そもそも世界の一極化とは? どれほど脚色してもこの言葉が意味することは一つ。権力の一極集中だ。権力や意思決定の一極集中である。唯一の支配者を持つ世界、損害を被るのは支配下の人々だけではない。支配者自身も内側からむしばまれる。特にアメリカはあらゆる意味で国境を侵している。その証拠に経済政治文化教育の政策を他国に強要している」

会場は各国首脳で満席です。前ドイツの女性首相メルケルも険しい顔で聞いている姿がアップで映っています。アメリカも険しい顔から破顔して苦笑をもらすジョン・マケイン上院議員の姿が。

大国の大統領が公の場で世界統一政府の動きを指摘したら、陰謀論であろうとなかろうと大騒ぎになっていい話です。しかし西側メディアは黙殺しました。

 

<ロシアもNATOに入ることを検討している>

これもはじめて知った裏話です。

プーチンクリントンとのモスクワでの会談でこう提案したそうです。「ロシアのNATO加盟も検討課題だ」と。クリントン大統領は賛成したが、代表団はピリピリしていた。と。

オリバー・ストーン「加盟申請は?」

プーチン「なぜピリピリしていたか説明しよう。ロシアが加盟すれば投票権を得る。我々を操作できなくなる。アメリカは検討さえしないだろう」

 

続いて第2話です。

オリバー・ストーンが質問します。

「2007年ミュンヘン会議で対米関係の新たな見解を語った。2002~2003年に何があった? 2004年のウクライナオレンジ革命をどう思ったか?」

親欧米派のユシチェンコ氏VS親ロシア派ヤヌコビッチ首相

プーチン「ヤヌコビッチが選挙に勝ったが、暴動が起きた。アメリカが扇動したことで大規模デモになった。ウクライナ憲法に反し、3度目の選挙が行われた。これ自体クーデターとみなされる」。

プーチン「親欧米派のユシチェンコティモシェンコが権力を握った。あのような政権交代は歓迎できない。だが、ロシアは新政権と協力関係を維持した。だが政策は国民に不評だった。だからヤヌコビッチが次の大統領選に勝った。この地のアメリカの外交政策はロシアとウクライナの関係改善を阻止することだ」

 

NATO拡大の波はふたつあったとプーチンは言います。

「2001年10月(息子)ブッシュ大統領プーチンと冷戦終結の再確認をすると演説。その後、アメリカが一方的にABM(弾道弾迎撃ミサイル制限)条約を脱退した。イランが新たな脅威だと言って。しかし、イランは軍事用核開発を断念した。それなのにABM開発計画は進行中で、一部ヨーロッパで配備予定。誰に対して? ロシアも対応せざるを得ない」

また、2008年(息子)ブッシュは旧ソ連ジョージア政府による南オセチア攻撃を支持。

「我々が驚いたのは、ブッシュ大統領ジョージアの大統領を支持しただけでなく、ロシアが侵略者であるという図式を描こうとしたことだ」とプーチン

オリバー・ストーン「ブッシュ、オバマとも良好だったはずでは?」

プーチンアメリカがコーカサス地方でテロ組織を支援したことが両国関係に水を差した」

スノーデンがロシアに亡命した経緯を運転しながら語るプーチンオリバー・ストーンが「昔はロシアからアメリカへ亡命、今はアメリカからロシアへ亡命?」と聞くと、「何の不思議もない」と返す。

「どんなに悪者扱いされてもロシアは民主国家、主権国家だ。それはリスクを伴うが大きな強みでもある。本当に主権を行使できる国家は数えるほどしかない」

「それ以外は同盟国の義務を負わされているんだ。そういう国は自分の意思で自らの主権を縛っている」

本当に主権を行使できない国・日本には耳の痛い話です。

 

以上、1話から2話までの抜粋で、「オリバー・ストーン オン プーチン」の前半をお送りしました。

 

アメリカは「いつ何時でも日本を裏切ることができる」~ハライター原の名著紹介<「日米関係」とは何だったのか>後半

原題アルタード・ステイツ(変えられた国――占領期以降のアメリカと日本)

草思社2004年発行 マイケル・シャラー著 市川洋一訳

厚い本でもありますので、前後半に分けてお伝えしています。今回は後半です。

引き続きアメリカ側はニクソンキッシンジャーです。

兵庫チャンネル

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アメリカは「日本の経済侵略」と捉えていた?

 

<引用>

ニクソンが日本の繊維業界の案を拒否→占領終了以後の相互関係のもっとも困難な時期の始まりを告げるもの。佐藤は自分あとがまを狙う福田赳夫田中角栄を外相、通産相に任命、事態を打開しようとしたが、彼らが就任したちょうどそのとき、ニクソンは二度にわたってショックを日本に与えた。中国訪問とドル金交換停止、輸入超過金の賦課、円の切り上げの強要、繊維製品輸入割当の賦課。

国務次官U・アレクシス・ジョンソンのいうように「国務省軽視と日本人侮蔑が一緒になったキッシンジャーの秘密癖は、中国問題をめぐる日米関係を徹底的に破壊した」

アメリカが守るからソ連と組んだり再軍備したりしない日本>

ニクソンによれば、アメリカの軍事力がアジアから後退すれば、日本は「ソ連と組むか、再軍備する」だろうが、それはいずれも中国から見れば、好ましくない選択肢である。ニクソンは毛も周もちょっと説明すれば、「日本を抑えたいという中国の希望をもっともよく適えてくれるの」は、アメリカが今後も日本、韓国、東南アジアに軍事力を保持することだということに同意すると信じていた。

 

国務次官U・アレクシス・ジョンソンによれば、ニクソンキッシンジャーは中国に魅せられ有頂天になり、アジアで最も重要な同盟国を脇に追いやった。…ジャーナリスト、ヘンリー・ブランドンは次のように述べる。アメリカは「日本が自主的で繁栄した輝かしいアジアの国になる」ことを本当は望んでいないし、日本を「親密なパートナー」と呼んでいるが、「いつ何時でも日本を裏切ることができる」

繊維問題は田中通産相がまとめた。

 

自民党各派閥の指導者たちは、佐藤の時代は、過去20年日本の位置を規定してきた「サンフランシスコ」体制とともにまもなく終わりを告げると考えていた。日中友好回復の達成を目指す争いの中で自民党の勇士たちは、1951年以来日中友好政策を主張してきた社会党をわきに押しのけた。中国市場の一片でも手に入れようと望んでいる日本企業は、台湾との関係を断ち、周恩来の貿易のための「四条件」を受け入れた。

 

1971年自民党幹事長保利茂は「パクスアメリカーナ」は終わったと書いた。世界はアメリカを軸にして回ることをやめ、三極あるいは五極の時代に入った。

 

中国訪問の翌年、ニクソンは北京で出し抜く競争はしないことを求め、核兵器への姿勢の見直しも求めた。アメリカ製ジェット機の購入拡大も求めた。佐藤は核兵器への要求には応じなかった。国会と国民の圧倒的多数が反対していることに加え、軍国主義復活という中国の非難に反論できる。佐藤は逆に、ニクソンに「アメリカは日本に核兵器はいっさい提供しない」、日本には「アメリカの核の傘以外に頼るべきものはない」と公に声明するよう求めた。

 

共産中国と台湾の双方を相手にするために中国とどのような約束をしたかは、ニクソンキッシンジャーも明らかにしていないが、台湾が中国の一部と認めたほかニクソンは再選後中国を正式承認し台湾との外交を断ち、日本の台湾支配を阻止するために何らかの手段を取ることをひそかに約束した。

 

1972年3月ニクソンは再び日本政府を愕然とさせた。沖縄と台湾の間の大陸棚上の無人地域に石油が発見されたとき、今度は中国が領有権を主張。ニクソンの訪中のあと、尖閣諸島について国務省は日本の主張に対する支持を修正し、あいまいな態度をとるようになったのである。佐藤の推測によれば、これは、ニクソンと毛とのあいだで何が話しあわれたかを示すものであった。

 

田中角栄は1972年7月首相就任。田中は職業外交官を信用せず、外務省を差し置いて経済界の指導者や野党の人たちを派遣。周の内諾を得た後、1972年8月ホノルルでニクソンと協議。日中国交回復と日米安保の維持ニクソンに約束。日本の貿易行動に対するアメリカの批判をなだめるために、全日空ロッキードからL-1011型旅客機21機を4億ドルで購入すると約束。

→※日中国交回復のためのお土産がロッキード事件のきっかけ。1974年11月贈賄が明らかにされ同年12月田中は辞任。1976年2月フランク・チャーチ上院議員によるチャーチ委員会は対外腐敗行為法(アメリカの会社が外国の高官に贈賄することを犯罪とする)の成立へとつながる。

 

ソビエトの拡張を抑えるため、毛と周はキッシンジャーに日本、パキスタン、イラン、トルコ、西欧を加えた枢軸を組織するように説いた。

ソビエトの指導者は敵対的な連合の結成を恐れ、日本の中国との協力を阻止し、ドルを手に入れるため、ソ連は日本にシベリアの膨大な石油、天然ガス、木材資源の開発に参加するよう申し出たが、不調。

 

<1980年代>

中曽根は1987年1月GNPの1%枠をえた。1987年下院は、国務省が日本政府にGNP3%に引き上げるか、それと同額をアメリカに払わせるよう要求した。

これは対日貿易赤字の反映、東芝のココム規制違反も怒りの反映に。

国守衆兵庫チャンネル - YouTube

<1980年代>

対米黒字で大量の財務省証券やドル建ての有価証券買い入れ。日本の「貸付」がレーガン政権の巨大な財政赤字政策(レーガノミックス、減税と防衛費の急激な増大)の金繰りを助けた。1981年1月に9億ドルだったアメリカの国債は1989年レーガン退任時2兆7000億ドルに。10年足らずで世界最大の債権国から世界最大の債務国に。日本は同時期世界最大の債権国に。

 

ベテランジャーナリストのセオドア・H・ホワイトは、連合国勝利40年たって、めざましい通商攻勢でアメリカ産業を解体しようとしている。1930年代と違って今度は全世界が日本の大共栄圏になり、大蔵省が発射台を備え、通産省が貿易攻勢という誘導ミサイルを発射している、と例える。

貿易赤字解消のため、ニクソンらが1971年から始めた戦略、日本からの輸入品の価格を上げ、アメリカの輸出品の価格を下げるために円を切り上げさせる――を遂行した。1985年プラザ合意、1987年ルーブル協定は、円の対ドル価値を引きあげ、ルーブル協定後は127円に下落(プラザ合意の前は254円)。

この対円価値の引き下げは貿易上の大きな効果はなかった。しかし、ドル建て有価証券を所有する投資家は大打撃。→有価証券から割安感のある不動産や法人へ。コロンビア映画、ユニバーサルスタジオ、ロックフェラーセンターは日本よりも所有しているオランダやイギリスと違い、ひときわ目立つものだったため、一般民衆の怒りを買った。

アメリカは「いつ何時でも日本を裏切ることができる」~ハライター原の名著紹介<「日米関係」とは何だったのか>後半

原題アルタード・ステイツ(変えられた国――占領期以降のアメリカと日本)

草思社2004年発行 マイケル・シャラー著 市川洋一訳

厚い本でもありますので、前後半に分けてお伝えしています。今回は後半です。

引き続きアメリカ側はニクソンキッシンジャーです。

<引用>

ニクソンが日本の繊維業界の案を拒否→占領終了以後の相互関係のもっとも困難な時期の始まりを告げるもの。佐藤は自分あとがまを狙う福田赳夫田中角栄を外相、通産相に任命、事態を打開しようとしたが、彼らが就任したちょうどそのとき、ニクソンは二度にわたってショックを日本に与えた。中国訪問とドル金交換停止、輸入超過金の賦課、円の切り上げの強要、繊維製品輸入割当の賦課。

国務次官U・アレクシス・ジョンソンのいうように「国務省軽視と日本人侮蔑が一緒になったキッシンジャーの秘密癖は、中国問題をめぐる日米関係を徹底的に破壊した」

アメリカが守るからソ連と組んだり再軍備したりしない日本>

ニクソンによれば、アメリカの軍事力がアジアから後退すれば、日本は「ソ連と組むか、再軍備する」だろうが、それはいずれも中国から見れば、好ましくない選択肢である。ニクソンは毛も周もちょっと説明すれば、「日本を抑えたいという中国の希望をもっともよく適えてくれるの」は、アメリカが今後も日本、韓国、東南アジアに軍事力を保持することだということに同意すると信じていた。

 

国務次官U・アレクシス・ジョンソンによれば、ニクソンキッシンジャーは中国に魅せられ有頂天になり、アジアで最も重要な同盟国を脇に追いやった。…ジャーナリスト、ヘンリー・ブランドンは次のように述べる。アメリカは「日本が自主的で繁栄した輝かしいアジアの国になる」ことを本当は望んでいないし、日本を「親密なパートナー」と呼んでいるが、「いつ何時でも日本を裏切ることができる」

繊維問題は田中通産相がまとめた。

 

自民党各派閥の指導者たちは、佐藤の時代は、過去20年日本の位置を規定してきた「サンフランシスコ」体制とともにまもなく終わりを告げると考えていた。日中友好回復の達成を目指す争いの中で自民党の勇士たちは、1951年以来日中友好政策を主張してきた社会党をわきに押しのけた。中国市場の一片でも手に入れようと望んでいる日本企業は、台湾との関係を断ち、周恩来の貿易のための「四条件」を受け入れた。

 

1971年自民党幹事長保利茂は「パクスアメリカーナ」は終わったと書いた。世界はアメリカを軸にして回ることをやめ、三極あるいは五極の時代に入った。

 

中国訪問の翌年、ニクソンは北京で出し抜く競争はしないことを求め、核兵器への姿勢の見直しも求めた。アメリカ製ジェット機の購入拡大も求めた。佐藤は核兵器への要求には応じなかった。国会と国民の圧倒的多数が反対していることに加え、軍国主義復活という中国の非難に反論できる。佐藤は逆に、ニクソンに「アメリカは日本に核兵器はいっさい提供しない」、日本には「アメリカの核の傘以外に頼るべきものはない」と公に声明するよう求めた。

 

共産中国と台湾の双方を相手にするために中国とどのような約束をしたかは、ニクソンキッシンジャーも明らかにしていないが、台湾が中国の一部と認めたほかニクソンは再選後中国を正式承認し台湾との外交を断ち、日本の台湾支配を阻止するために何らかの手段を取ることをひそかに約束した。

 

1972年3月ニクソンは再び日本政府を愕然とさせた。沖縄と台湾の間の大陸棚上の無人地域に石油が発見されたとき、今度は中国が領有権を主張。ニクソンの訪中のあと、尖閣諸島について国務省は日本の主張に対する支持を修正し、あいまいな態度をとるようになったのである。佐藤の推測によれば、これは、ニクソンと毛とのあいだで何が話しあわれたかを示すものであった。

 

田中角栄は1972年7月首相就任。田中は職業外交官を信用せず、外務省を差し置いて経済界の指導者や野党の人たちを派遣。周の内諾を得た後、1972年8月ホノルルでニクソンと協議。日中国交回復と日米安保の維持ニクソンに約束。日本の貿易行動に対するアメリカの批判をなだめるために、全日空ロッキードからL-1011型旅客機21機を4億ドルで購入すると約束。

→※日中国交回復のためのお土産がロッキード事件のきっかけ。1974年11月贈賄が明らかにされ同年12月田中は辞任。1976年2月フランク・チャーチ上院議員によるチャーチ委員会は対外腐敗行為法(アメリカの会社が外国の高官に贈賄することを犯罪とする)の成立へとつながる。

 

ソビエトの拡張を抑えるため、毛と周はキッシンジャーに日本、パキスタン、イラン、トルコ、西欧を加えた枢軸を組織するように説いた。

ソビエトの指導者は敵対的な連合の結成を恐れ、日本の中国との協力を阻止し、ドルを手に入れるため、ソ連は日本にシベリアの膨大な石油、天然ガス、木材資源の開発に参加するよう申し出たが、不調。

 

<1980年代>

中曽根は1987年1月GNPの1%枠をえた。1987年下院は、国務省が日本政府にGNP3%に引き上げるか、それと同額をアメリカに払わせるよう要求した。

これは対日貿易赤字の反映、東芝のココム規制違反も怒りの反映に。

 

<1980年代>

対米黒字で大量の財務省証券やドル建ての有価証券買い入れ。日本の「貸付」がレーガン政権の巨大な財政赤字政策(レーガノミックス、減税と防衛費の急激な増大)の金繰りを助けた。1981年1月に9億ドルだったアメリカの国債は1989年レーガン退任時2兆7000億ドルに。10年足らずで世界最大の債権国から世界最大の債務国に。日本は同時期世界最大の債権国に。

 

ベテランジャーナリストのセオドア・H・ホワイトは、連合国勝利40年たって、めざましい通商攻勢でアメリカ産業を解体しようとしている。1930年代と違って今度は全世界が日本の大共栄圏になり、大蔵省が発射台を備え、通産省が貿易攻勢という誘導ミサイルを発射している、と例える。

貿易赤字解消のため、ニクソンらが1971年から始めた戦略、日本からの輸入品の価格を上げ、アメリカの輸出品の価格を下げるために円を切り上げさせる――を遂行した。1985年プラザ合意、1987年ルーブル協定は、円の対ドル価値を引きあげ、ルーブル協定後は127円に下落(プラザ合意の前は254円)。

この対円価値の引き下げは貿易上の大きな効果はなかった。しかし、ドル建て有価証券を所有する投資家は大打撃。→有価証券から割安感のある不動産や法人へ。コロンビア映画、ユニバーサルスタジオ、ロックフェラーセンターは日本よりも所有しているオランダやイギリスと違い、ひときわ目立つものだったため、一般民衆の怒りを買った。