陽謀日記

陽謀を明かします

「911後秘密の諜報機関の扉が技術おたくに大きく開かれた」~ハライター原の名著紹介・スノーデン関連2作品「独白」と「暴露」前半

「スノーデン独白 消せない記録」(エドワード・スノーデン著 2019年 河出書房新社

「暴露 スノーデンが私に託したファイル」(グレン・グリーンウォルド著 2014年 新潮社)

 

独白と暴露

を紹介する前半です。

 

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このスノーデン自伝にはオリバー・ストーンの映画「スノーデン」やドキュメンタリー「オリバー・ストーン オン プーチン」で取り上げられた<日本のインフラ破壊ウイルスの話>はまったく出てきませんでした。 信頼できる記者には資料提供しましたが、本人自身がひとつひとつの証拠を情報開示することはなかったからかもしれません。香港を立つときに今後一切証拠にアクセスできないようにしています。 一方、記者の本では多数の証拠とともに具体的な告発があります。 探し物はありませんでしたが、十分すぎるほど衝撃的な内容です。世界や日本がどこに向かっているかがはっきりしました。 前半は諜報活動の民営化、後半は日本がファイブ・アイズ各国より明らかに格下の「同盟国」であることを紹介していきます。

自伝本の帯に「スノーデンがやったことは、NSAによって、電話やネット上のほとんどあらゆる活動を完全に記録・保存できる<大量監視システム>が開発配備されているという暴露」とありますが、あまりに大きな悪巧み過ぎてふつうの人にはピンとこないかもしれません。実はわたしも映画「スノーデン」は以前ビデオで見たのにほぼ何の引っ掛かりもなかったのです。目覚めてなかったですが。

スノーデンは愛国心の発露として諜報活動に携わった自分史の中で、それこそ現職大統領の私生活を丸裸にできるほどの誰でもいつでもどこでも監視できる恐さを世界市民にも噛み砕いて説明しようとしたのでしょう。「削除は奥深くに移しただけで一瞬に削除などできません。コピーに時間がかかることを見ればわかります」といった噛み砕きです。収集されたのはコンテンツとメタデータ。コンテンツと言っても取るに足らない会話の中身を収集してどうするの?という人もいるでしょう。より問題なのはメタデータです。昨晩どこで寝たか、今朝何時に起きたか、日中に訪れた場所、誰と接触し、誰に接触されたか、まさに日常の行動が丸裸にされます。しかもコンテンツと違い、自分でコントロールできません。すべてを読む必要のない仕分けをメタデータがしています。

また、これまで「対テロ戦争株式会社」などで紹介してきた通り、民営化の大波があらゆる国営を飲み込んでいることがわかります。それは紛れもない諜報活動の民営化です。

機密の暴露後、政府には、大した学歴もなく、職を転々とした信用できない人物として描かれたスノーデンですが、次のような説明がわかりやすいでしょう。

911後に望まれたの、はコンピューター技術を持つ人材だけだったと。

「二度と911のような不意を突かれないシステム構築に欠かせないのは技術。その結果、極度の秘密性につつまれた諜報機関の扉が技術おたくに大きく開かれた」 「各種諜報機関は、自分たちの内規をすべて無視して技術的な能力を持った人間をなんとか雇おうとした」 「アメリカの諜報活動は、公僕と同じくらい民間の従業員がやっている。契約業者を使えば、福利厚生や年金を払う義務は負わずにすむが、政府高官に本当の利点は、利益相反だ」

スノーデンは実際には民間業者の所属であっても、7年間で一貫してCIA、NSA内で働き、キャリアを積んでいます。デルやブーズ・アレン・ハミルトンは一種の派遣会社のように見えます。

CIA新本部ビルでの初日、みんなコンピューター屋、ほとんど全員が契約職員の緑色バッジという記述に凄まじい民営化ぶりがよくわかる。

そしていわゆる取るに足らない小物でない証拠は、アメリカ政府のまさに血眼の捜索がそれを物語っている。

香港でインタビューを受けたあと、国連やウィキリークスの助けを借りながらもアメリカの影響下を避けるルートをたどる途中、ジョン・ケリー国務長官がスノーデンのパスポートを無効にしました。ロシア・シェレメーチェボ空港ではロシア諜報機関から「情報提供を打診されるも拒否」して40日足止めをくい、その間にスノーデンは27か国に政治亡命を申請するもアメリカに逆らえる国はなく、結局8月1日ロシアが一時亡命を認めた。

スノーデンの諜報活動7年間で、「的を絞った個人の諜報から全国民の大量諜報への変化した」

仕事内容も諜報の流れを管理し接続する→永遠に保存する方法を考案→あらゆる場所からアクセス検索するに変化し、自ずとアクセス権限も上がり、最高機密に接するまでになる。最後の赴任先であるハワイ。「ハワイのパイナップル畑の地下奥深くで、ほとんど世界中あらゆる老若男女の通信に無限にアクセスできた。そうした人々の中にはアメリカ国民3・2億人もいて、アメリカの憲法だけでなくあらゆる自由な社会の基本的価値観を大幅に侵害する形で監視されている」と述べている。

<暴露した理由>

世界中の、先進的だと言われる政府がこのプライバシーを守るという約束を軽視しているのを目撃したので、ぼくは告発した。もうすでに6年になる。だが6年にわたり、こうした軽視は続く一方で、その間に民主主義国は専制主義的なポピュリズムへと退行した。この退行が最も露骨に出ているのは、政府とマスコミの関係だ。…何が本当かが、意図的にフェイクとごっちゃにされ、そこで使われている技術は、その混同を空前の世界的な混乱へとスケールアップできてしまう。…非現実の創造は、諜報業界の最も恐ろしい技術だからだ。ぼくのキャリア期間だけですら諜報を操作して戦争の口実をつくり出したその機関は――そして違法な政策と影の法廷により、誘拐を「超法規的移送」として、拷問を「拡張された尋問」として、大量監視を「バルク収集」として許容したその機関は――一瞬のためらいもなくぼくを中国の二重スパイ、ロシアの三重スパイ、いやもっとひどい「ミレニアル」呼ばわりさえしたのだった。

そして、これは次に紹介するグレン・グリーンウォルド記者の著作から詳細にわかるが、同盟国といえども諜報対象ということです。

スノーデンは、大使館は諜報のプラットフォームというほどです。

諜報の収集分析が、陽動情報やプロパガンダの生産にも使えてしまい、それがアメリカの敵と同じくらい同盟国に対しても――そしてときにはその市民について使われるのも知っている。

と述べています。