ハライター原の名著紹介「ホロコースト産業」
当初はタイトルとサブタイトルだけのミニ紹介にしようと思いましたが、再読すると、やはりある程度お伝えして、機会があればぜひ図書館で借りて読んでいただきたいと思いましたので予定より長めにお伝えします。
2004年12月発行、著者ノーマン・G・フィンケルスタイン、三交社発行、立木勝翻訳
ブルックリン出身のユダヤ系アメリカ人、両親ともにナチ強制収容所からの生還者。デボール大学(シカゴ)政治学助教授
抜粋していきます。
ホロコースト産業は、イスラエルが圧倒的な軍事的優位を誇示した後になって発生し、イスラエルが勝利に意気揚々とするなかで花開いたのである。
イデオロギーとして鋳造し直してみると、ザ・ホロコーストはイスラエルへの批判をそらす上で完璧な武器だった。
アイデンティティー・ポリティックスとザ・ホロコーストがアメリカのユダヤ人に根づいたのは、犠牲者としての彼らの立場が理由ではない。理由は、彼らが犠牲者ではなかったからだ。
第二次大戦後ユダヤ人は合衆国内の階層を上昇した。リプセットとラーブによれば、現在ユダヤ人の年収は非ユダヤ人のほぼ二倍だ。もっとも富裕なアメリカ人40人のうち16人はユダヤ人だし、アメリカのノーベル賞受賞者の40%、主要大学教授の20%、ニューヨークおよびワシントンの一流法律事務所の共同経営者の40%もユダヤ人である(以下リストは延々続く)。
小説家フィリップ・ロス「アメリカのユダヤ人のこどもが受け継ぐものはある種の哲学だけ。その哲学は三語に集約される。ジューズ・アー・ベター(ユダヤ人はすぐれている)」
ADL(名誉棄損防止同盟)とサイモン・ヴィーゼンタール・センターとの間でし烈な争いが起こっている。
※WJC(世界ユダヤ人会議)、AJC(アメリカユダヤ人委員会)
ユダヤ人エリートたちは、自分たちの企業および階級的利益を擁護するために攻撃的な活動を繰り広げ、自らの新たな保守政策に反するものすべてに反ユダヤ主義のレッテルを貼った。
いちばん弱くてノーの言えない者に重荷を負わせるーこれこそが組織的アメリカンユダヤの主張する「勇気」の、本当の中身なのである。
第二次世界大戦の余韻が残っていた時期、ナチ・ホロコーストはユダヤ人だけの事件とは考えられていなかったし、ましてや歴史的に唯一無二の事件という役割などあたえられていなかった。
<フィクション?>
ホロコーストの基本文献とされるイェール・コジンスキーの「異端の鳥」
→実際は戦時中ずっと両親と暮らしていたコジンスキーがポーランドの農村をひとりさまよう。ポーランド農民による性的虐待など反ユダヤ主義が描かれたが、実際はコジンスキー一家がユダヤ人であることも当局に知れたらどんな目に遭うかも承知でポーランド農民にかくまわれた。
ビンヤミン・ヴィルコミルスキーの「断片」
→異端の鳥を踏襲。戦争の間中スイスにいた筆者。彼はユダヤ人ですらなかった。サディスティックな収容所の看守が新生児の頭蓋骨を楽し気に砕く様を回想する。フィクションと断定されたが……。
クリントン政権のスチュアート・アイゼンスタットによれば、世界ユダヤ人会議の会長で億万長者のエドガー・ブロンフマンが「大統領選挙ではビル・クリントンへの最大の献金者の一人」であり、クリントン政権は「没収されたユダヤ人資産を回復する」よう「エドガー・ブロンフマンからの圧力を受けていた」
アイゼンスタットは「しかしこれまでのところ、もっとも意外な発見はイスラエルでなされている。2000年1月、イスラエル最大の銀行であるレウミ銀行がおよそ1万3000件にのぼる休眠口座を抱えていることを公表したのだ」と単なる好奇心を覚えているだけ。ヴォルカー監査がスイスの銀行で発見したのとほぼ同じ数だ。これに加え、「ホロコーストで殺されたユダヤ人が購入したイスラエル国内の土地および資産のうち、数億ドル相当が、まだ正当な相続者に回復されていないと推定されている」
▽ドイツは五〇年代以降、ホロコースト生還者に六〇〇億ドル以上支払ってきた
世界中のホロコースト生還者五〇万人に対して(ひとり平均12万ドル1200万円)…これ以外にもダイムラー、シーメンス、フォルクスワーゲンなどドイツ企業がユダヤ人請求会議に個別に補償している。
▽ナチの大虐殺を忘れるな、ただし他の大虐殺はすべて忘れよ
ホロコーストの重要な教訓。まだある。人道に対する犯罪に目を光らせろ、ただし自国政府が犯したものは除く。
▽アメリカ政府が信託されたネイティブ・アメリカン財産の行方
※ブログ主抄録:1996年ネイティブ・アメリカンの人権基金は、「クリントン政権は恥を知るべきだ」とアメリカ史上最大の集団訴訟を起こした。「アメリカ版ホロコースト」の貧しい子孫たちは、年収は低く失業率は高く高齢者は健康保険に加入できない。その背景に信託基金のずさんな運営にあったというもの。ランバース判事は「連邦政府の計画でこれほど管理のずさんなものは歴史上にも見当たらないだろう」と結論付け、政府が裁判所の決定に従うよう監視。
1999年2月公判ランバース判事は財務省が保管すると約束した書類を破棄したことから「近代現職の長官で法廷侮辱罪に問われたものはいない」「連邦政府によるこれほど悪質な職権乱用は見たことがない」
→財務省だけでなく、クリントン政権下の内務省は法廷が救済措置を出さないように妨害。ランバース判事「私の任期は終身だが、内務省がこんなペースで進むと、それでも十分な期間だとは言えない」
2003年1月原告のネイティブ・アメリカンがランバース判事に私蔵の詳細な法廷フィルを提出。それによれば、政府は過去115年以上1372億ドルをだましとってきた。
<参考>
ヴォルカ―は、アラン・グリーンスパンの前のFRB議長ポール・ヴォルカー。