ウサマビンラディンは付け足し?~名著紹介<対テロ戦争株式会社 「不安の政治」から営利をむさぼる企業>後半
名著紹介<対テロ戦争株式会社 「不安の政治」から営利をむさぼる企業>の後半となります。
2008年河出書房発行、ソロモン・ヒューズ著、松本剛史訳
政府が金儲けできて、責任逃れもできる民営化の「魅力」を紹介します。草莽には、なんでも民営化のおぞましさだけが骨身にしみます。
冷戦の終結…同時にアメリカと同盟国はもはや世界の舞台で本格的な敵に悩まされることはなくなり、遠く離れた土地での新しい冒険にひきつけられた。
「力の投射」=遠征軍らしい装備=が新しいスローガン
軍事顧問は「非対称の戦争」=NATO対ワルシャワ条約機構は明らかな対称性あり、予測可能。テロリストやならず者国家の動きは予測不能=を心配し始めた。
アルカイダの2001年テロをきっかけに、かつては世界の周縁と考えられていた地域に直接、正確に手を伸ばし、介入する能力が緊急に必要になった。
「スポンサー付き予備兵力」―本来は民間の職員だが、戦闘中には空軍の兵士にも転用できる。
「国家建設」は対テロ戦争の主要なテーマになった。もとは宗主国からの独立し独自の国家をつくることだが、冷戦終結後、新たな意味が。
先進国が発展途上国に自分たちの政治、社会形態を押し付けることを意味するようになった。
クリントンのハイチ介入(イラク侵攻のウオーミングアップとして比較的穏当な侵攻)では、ある際立った特徴。国家建設に軍を使うことに共和党の批判があり、クリントンは民間企業ダインコープ(第二次大戦帰還の米軍パイロットが設立)と契約。新しいハイチ国家警察の訓練を行わせた。新警察1995年7月から2年、ヒューマンライツウォッチが、新警察隊が死と虐待に責任ありと報告。民間指導でつくられた警察の悪行はのちのイラク、アフガニスタンでの問題の先触れ。だが、契約業者と政府とで責任が分散された結果、あまり大きな批判を浴びず。
アメリカの麻薬取締当局はダインコープ社と契約。南米コロンビアやペルーで麻薬戦争に関与。コカ畑を根絶やしにするモンサントのラウンドアップ空中散布。→コロンビア国境のエクアドル農民の住民訴訟も
ボスニアの再建、国際警察ではダインコープのセクハラで保安官事務所を首になった元保安官補のセクハラ。
ボスニアの不名誉から二つの教訓:再建の責任を避けるために契約業者に頼るのは間違い。戦後再建に民間を使うなら芳しからぬ記録をもつ会社を使う前によく考えるべき。しかし教訓は生かされず。ロンドンもワシントンもダインコープに魅了される。2002年イギリスの外務相ジャック・ストローは「民間軍事会社がすべての新たな国際行動の中心を担うべきだ」という諮問書を提出。ダインコープ社が8回出てくる。
イラクをめちゃくちゃにしたのはだれだ!
イラク再建では、企業による再建のために、イラクの現在の政府機関すべてを事実上廃止。軍は解体されバース党は非合法化された。連合国は選挙にもとづいたイラクの再建を行おうとはせず、契約によって立て直そうとした。
イラクでのダインコープ社の警察再建は、短い訓練期間に質の悪い指導が組み合わさって新しい警察の隅々にシーア派の民兵が入り込み、制服を悪用して宗派対立にもとづく拷問や暗殺をくりかえす。
また別の会社パーソンズ・コーポレーションはバグダッドの警察学校を7500万ドルで再建契約。安普請により上の階から糞尿が大量にあふれ、未来の警官たちの上に滴った。そしてこの粗雑な寄せ集めの隊はばらばらに分裂してそれぞれがギャングになった。
1990年10月10日クエート侵攻のイラク軍の蛮行を証言。ナイ―ラというクエートの15歳の少女は「病院でボランティアとして働いているとき、イラク兵士が銃を持って病院に入り、保育器から赤ん坊を取り出し、冷たい床で死ぬにまかせた」この話をブッシュシニアは、10回は繰り返し米国民に恐怖を想起させた。やがてアメリカ主導の戦争が始まり、1991年サダムの軍はクエートから駆逐された。
☆死んだ赤ん坊の話の真相
①ヒル&ノウルトン社という商業的PR会社が苦労して作り上げたものだった
②ナイ―ラはクエートの駐アメリカ大使の娘だった
→クエートの石油王たちの隠れ蓑「自由クエート市民」を通じて出資し、大手P会社ヒル&ノウルトンによって仕掛けられたキャンペーンの一環
911ハイジャック犯の大半はサウジアラビア人。イラク人はひとりもいない。が、イラクは対テロ戦争の中心に。
ニューヨーク法学生サッド・アンダーソンはあるノートを入手。スティーヴン・キャンボーンがワールドトレードセンターの崩壊から2時間のうち、ラムズフェルドの指示をまとめた。「近い将来の標的が必要。やれるだけやれなにもかも。関連があろうとなかろうと」
さらにこうも書いてあった。「一番いいのは早い情報。サダム・フセインをたたけるだけの情報か同時に判断せよ。ウサマビンラディンだけでなく」
911首謀者とされるビンラディンはラムズフェルドにとっては、付け足しだったようです。
<参考>
※ドナルド・ラムズフェルド国防長官
ギリアド・サイエンシズ社の重役
インフルエンザ治療薬「タミフル」で儲けた会社がギ社。ラムズフェルドは昨年6月亡くなったが、同社重役の経歴を書いた一般紙はなかったのではないだろうか。「タミフルは日本が世界で一番売れているという発言の記録が国会議事録にも残っている。ラムズフェルドに限らず、米政府高官が前職などで営利企業の重役である事実は多い。不都合な真実なのか日本の一般紙は「報道しない自由」で触れないことが多いように見える。