陽謀日記

陽謀を明かします

くにもり兵庫ch更新 英紙報道「ブッシュ大統領は英国のトニー・ブレア首相にアルジャジーラを爆撃したいとの意向を伝えた」~名著紹介「ブラックウォーター」後編

 

<企業は罰を受ける体も、非難される魂も持たないのだから、好き勝手に行動する>

イギリス貴族のことば

 

現在の社名は「アカデミ」。知らなければ教育事業の会社を思い浮かべそうだ

ファルージャ爆撃 

前編の後段で紹介したニスール広場でのブラックウォーター社員による銃乱射事件で反米意識が高まった結果、2004年3月31日ファルージャで同社員4人が殺害されました。その報復として、米軍は「犯人を探し出すために」ファルージャ包囲爆撃作戦を展開しました。

ファルージャに対する最初の包囲攻撃で、最終的には恐らく約800人のイラク人が死亡した。(中略)数か月後の2004年11月、米軍はファルージャにさらに大規模な攻撃を加えた。それによりさらに数百人のイラク人が死亡し、(中略)米軍は総計700回近くの空爆を行い」

※外国人戦士4人への報復が子供や女性、老人を含む多数の市民への集団的懲罰なのか?というわけです。もっともな話です。

アルジャジーラの取材陣が現地入りして空爆で病院に運ばれたおびただしい数の子供と女性の変わり果てた姿を世界に報じると、米政府は「プロパガンダだ」と反応しました。

英国の「デイリー・ミラー」紙に掲載された、「極秘」の印が押された英国政府の記録によれば、ブッシュ大統領は英国のトニー・ブレア首相にアルジャジーラを爆撃したいとの意向を伝えたとされている、と書かれています。

▽傭兵が米兵に命令

ブラックウォーター社員4人が殺害された事件は大々的に報じられましたが、その5日後この戦争の象徴的な瞬間がありました。

ナジャフで起きたシーア派による暴動でブラックウォーターが果たした重要な役割はほとんど注目されなかった。それにもかかわらず、戦闘時にブラックウォーターの傭兵が現役米兵に命令を出すというこの出来事は、ブッシュ政権が今までになかった規模で戦争の外部委託を行っていたことを劇的に示すものだった」と書いています。

 

イラクの初代”総督”

イラクの初代”総督”はL・ポール・ブレマー三世です。ヘンリー・キッシンジャー国務長官の補佐官、キッシンジャーコンサルティング会社専務などの経歴を持ち、「イラクについての知識では任務を十分に果たせない」が、「対テロ戦争で金儲けする達人」と評されて、サダム・フセインの旧大統領宮に乗り込んできました。

※要人警護の対象は富裕層にも広がっていきます。ブラックウォーターはいち早くハリケーンカトリーナの被災地入りしました。災害救援ではなく、「災害後の暴動掠奪からの富裕層警護」という名目です。

ブレマー”総督”は◇学校教師、医師、看護師ら何千人もの公務員解雇◇イラク軍解体で40万人が離職という復興とは無縁の国家解体に精を出す一方◇大幅な減税で多国籍企業に寛容な一連の極端な法律を制定しました。

テロとの戦い、独裁者からの解放、民営化等々耳障りのいいことばかり言いますが、私腹を肥やし外国の国民を傷めつけているだけにしか見えません。

 

▽チリ人部隊 

アメリカからのイラク派兵要請を断った国であっても、その国の市民が傭兵会社の高額賃金にひかれて契約社員として赴任する。傭兵会社の外人部隊は、まさに国境のない戦争のグローバル民営化の象徴と言えます。

「世界中―特に恐ろしい人権記録と悪評を軍や治安部隊が持つ国―で、積極的に人員の採用を進めた。(中略)ブラックウォーターがイラクに送り込んだ非米国人からなる派遣部隊のうち最大規模を誇ったのは、チリの元奇襲部隊員だった。彼らの中には、残忍な軍事独裁者アウグスト・ピノチェト将軍の下で訓練を受けたり軍務に服していた者もいた」

※チリと米国の二重国籍の元陸軍士官の勧誘が奏功したようですが、1000人近くのチリ人がイラクに参戦しました。

 

後日談として、訳者塩山花子氏の訳者あとがきによりますと、

▽ブラックウォーターは、ニスール広場虐殺事件後2度改名し、2010年に投資家グループに買収され、3回目の改名で「アカデミ」になりました。

※国は簡単に改名できませんが、傭兵会社は改名も所有者交代も簡単です。

▽日本では2007年青森県つがる市の旧車力村しゃりきむらでレイセオン社の弾道ミサイル探知・追尾レーダーの警備に当たっていたということです。二社合わせて約100人が基地周辺に住み、活動していたということです。

 

しかし、戦争の民営化がこんなに進んだのかと驚くのは、植民地政策の歴史をよく知らないからかもしれません。

 

読み始めたばかりですが、「略奪の帝国 東インド会社の興亡」(ウィリアム・ダルリンプル著、河出書房新社2022年発刊)を少し紹介しましょう。

 

「17世紀初頭のインドは世界人口のおよそ5分の1、生産量は世界全体のおよそ4分の1、君主は世界一の大富豪、兵力は400万。一方、当時のイギリスの人口はインドのわずか5%、世界の工業製品に占めるイギリス製品も3%弱でしかなかった。オランダ東インド会社にも後塵を拝していたイギリス東インド会社がいかなる権謀術数で、強力なムガル帝国を代わってインドを支配できたのか」を紐解く興味深い本です。

 

本書冒頭にあるイギリス貴族のことばを紹介しましょう。これこそが企業、法人、会社というものの本質だと思います。

 

<企業は罰を受ける体も、非難される魂も持たないのだから、好き勝手に行動する>